第6回.収益の態様

(1) 企業からロイヤリティー等の金銭を受け取る
① 受け取る態様
(a) 特許権発生前
・その発明を実施するためのノウハウを企業に供与してその対価を受け取る。
・その発明に関する特許を受ける権利(又は持分)を企業に譲渡してその対価を受け取る。
(b) 特許権発生後
・その特許権について企業に実施権を許諾して企業からロイヤリティーを受け取る。
許諾の種類には専用実施権と通常実施権があります。専用実施権は許諾を受けた企業だけが独占排他的に実施できる権利であり、通常実施権は許諾を受けた企業も実施できますが、特許権者が他の企業に許諾すれば他の企業も実施できることになります。
・特許権(又は持分)を企業に譲渡してその対価を受け取る。
② ロイヤリティの金額
ロイヤリティの金額は当事者間において任意に決定される事項です。一般に特許商品の売価の3~5%、医薬品では30%以上になることもあると言われています。
③ 特許権が共有の場合
大学と企業が特許権を共有している場合、大学はその特許発明を実施せず、企業がその特許発明の不実施の補償として大学に金銭を提供するという契約をしている例が多いようです。
しかし、企業としては大学に対する「不実施の補償」という考え方には不満があるようです。
その理由は、特許法第73条第2項に、特許権が共有に係る場合、各共有者は他の共有者の同意を得ることなく当該特許発明を各々自由に実施できると定められており、各共有者の実施の権能は他の共有者が実施するしないとは関係無いはずである、というものです。
しかし、この問題は特許法の条文の解釈で解決すべきものではなく、両者の利益のバランスから考えるべきものと思われます。
まず、大学と企業が共同研究をする場合の態様を考えるに、研究費は企業が負担し、この研究費によって大学内で大学の先生方や企業の社員が共同研究をするというのが一般的です。
この場合、共同研究について企業が大学側から受けた利益は、提供した研究費で相殺されるでしょうか。
そうではないと思います。共同研究は、企業にとって、
①その分野の最先端で研究している優秀な人材の協力が得られる、
②その分野の最先端の情報が得られる、
③優秀な人材によって、あるいは優秀な人材の指導によって研究が行われる、
④高価な研究設備に投資しなくて済む、
⑤その分野の最先端で研究している人材を高給で雇い続けなくて済む、
⑥競争力の高い独自商品の開発が期待できる、
⑦大学と共同研究をしているということで各種の補助金が確保できる、
といった、自社だけでは到底得難い多くの利益があります。
企業の経営責任者ならわかると思いますが、優秀な人材が持っている着想や情報は企業にとって得難いものです。
提供した研究費の金額にもよりますが、これらの利益は負担した研究費以上のものと思われます。
かかる得難い多くの利益から考えると、研究成果が出た時点で利益が相殺されたとは到底考えられません。
従って、企業は、研究の結果生まれた発明に対し、独占実施をすると否とに関わらず、また不実施の補償という受け入れ難い名目であっても、利用料を払うべきものと思われます。
(2) ベンチャーを立ち上げて収益する
大学関係者がベンチャーを立ち上げてその発明を事業化することも考えられます。国や地方公共団体等にはベンチャー支援のための補助金制度が種々設けられているので、これらの制度を研究してみるのも良いでしょう。
(3) その他
・特許権を侵害している企業を見付け、損害賠償金を取る(アメリカに多い)。
・特許出願を契機として、特許出願をしたその技術の未解明の部分を更に研究するための研究費を民間企業から提供してもらう。
・特許出願をした技術の事業化研究のための補助金を国、公益法人等に申請して研究のための補助金をもらう。