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第3回.だれが特許を受けることができるか
(1) 自然人、法人
自然人や法人は特許を受けることができますが、法人格の無い団体(任意団体、単なる組合等)は特許を受けることができません。
「自然人」とは、人間をいい、大人だけでなく、子供も含まれます。小さな子供であっても、本当にその発明をした者であれば、特許を受けることができます。
「法人」とは、法律によって人格を付与された団体をいい、企業、財団法人、大学法人、NPO法人等が法人になります。組合が法人になるかは問題がありますが、その組合の準拠法が法人格を認めている組合は法人になります。
従来、国立大学は国の機関であり、法人ではありませんでしたので、大学の名において特許を受けることができず、国の名において特許を受けるしかありませんでした。しかし、平成16年、国立大学は国立大学法人となり、以後、大学の名において特許を受けることができることになりました。
(2) 日本人、外国人
日本人は何人も特許を受けることができますが、日本に住所又は居所を有しない外国人は特許を受けられない場合があります(第25条)。
(3) 特許を受ける権利を有する者でなければならない
「特許を受ける権利」を有していなければ特許を受けることができません。(第29条第1項柱書)。
①自然人の場合
「特許を受ける権利」は発明をすることにより発生します。発明は自然人(人間)のみが行うことができる行為なので、「特許を受ける権利」は自然人がまず取得します。自然人はこの「特許を受ける権利」に基づいて特許出願をすることもできるし、「特許を受ける権利」を企業等に譲渡することもできます。
②法人の場合
従業者が職務に属する発明をした場合、特許を受ける権利は、勤務規則により使用者に譲渡され、使用者は譲渡された特許を受ける権利に基づいて特許出願をすることになります。
大学の研究者も大学に雇用されていますので、大学の研究者が職務に属する発明をした場合、特許を受ける権利は大学に譲渡され、大学は譲渡された特許を受ける権利に基づいて特許出願をすることになります。
③大学において注意すべきケース
(a)共同研究の場合
大学と民間企業が共同で研究をする場合がありますが、共同で研究をして発明が生まれた場合、契約で別段の定めをしていない限り、特許を受ける権利は大学と民間企業との共有になり、大学と民間企業は共同でなければ特許出願をすることができません(第38条参照)。
(b)受託研究等の場合
大学の研究者が民間企業が提供した研究費(受託研究費、奨学寄付金、委任寄付金)を使って研究をし、発明が生まれた場合、従来は民間企業に特許を受ける権利が譲渡され、民間企業はこの特許を受ける権利に基づいて特許出願をしていたようです。
しかし、大学の研究者は大学に雇用されている従業者なので、どのような研究費を使ったにせよ、大学の研究者が職務に属する発明をした場合、契約で別段の定めをしていない限り、特許を受ける権利は大学に帰属します。
従って、大学の研究者が職務に属する発明をした場合、特許を受ける権利は大学に譲渡され、大学は譲渡された特許を受ける権利に基づいて特許出願をすることになります。
研究を依頼した企業は大学から実施許諾を受けてその発明の実施をすることになります。
(c)受託研究員の場合
受託研究員は大学の研究者から研究について指導は受けているものの、大学から雇用されているわけでなく、民間企業から雇用されています。従って、受託研究員が単独で発明をした場合、契約で別段の定めをしていない限り、特許を受ける権利は受託研究員を雇用している民間企業に帰属することになります。
(d)寄付講座・寄付研究部門の場合
大学の寄付講座の研究者が発明をした場合も、その研究者は大学に雇用されているわけですから、契約で別段の定めをしていない限り、特許を受ける権利は大学に帰属することになります。
(e)学生の場合
研究に学生を関与させて発明が生まれた場合、生まれた発明について学生が特許を受ける権利の共有者になることがあります。しかし、一般に学生は大学と雇用関係がないので、勤務規則や特許法の職務発明の規定は適用できません。従って、この場合は大学と学生との間で特許を受ける権利について個別に譲渡契約を結ぶ必要があります。
(4) 最先の特許出願人でなければならない
2以上の特許出願が相前後して出された場合、最先の一の特許出願人のみが特許を受けることができます(先願主義:第39条)。
一の特許出願人のみが特許を受けることができるとしたのは、特許権は独占排他権(第68条)であり、同一の発明について2以上の独占排他的な特許権を重複して成立させることは論理的にできないからです。
また、最先の特許出願人としたのは、いち早く特許出願をした者を保護するのが、発明を公開させて産業の発達を図ろうという特許制度の趣旨に合致するからです。
なお、先願主義は世界の趨勢ですが、米国は建国以来、先発明主義を堅持してきました。しかし、米国も先発明主義を採ることにより生ずる種々の不都合をなくすために、2009年3月、先願主義に移行する法案「Patent Reform Act of 2009」を議会に提出しました。米国も近いうちに先願主義を採用することになると思われます。
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